桃のつぶやき   10月

       桃のつぶやき    十月号

●近親婚はお断りー授粉と受精

  植物の花には通常、雄しべと雌しべが同居しています。それを、「両性花」と呼びます。

  同じ花に雄しべと雌しべがあるなら「授粉」は、たやすいと思うかもしれませんが、多くの

  種子植物は「自家受粉」を望んでいません。

 

   雄しべの花粉は、別の個体の雌しべと授粉することを望み、雌しべもまた別の個体の花粉

  やってくることを望んでいます。そうでなければ、「有性生殖」する意味がないからです。

 

   ※ (有性生殖…オスとメスを掛け合わせ、新たな遺伝情報を持つ子を作ること)

 

   植物は「自家受粉」を避けるために、さまざまな仕組みを発達させてきました。そのひとつ

  の方法が、雄しべと雌しべの成熟の時期をずらす「雌雄異熟」です。

 

   それでも、同じ花の花粉が同じ花の雌しべに付着することがあります。その場合は、雌しべ

  が柱頭に付着した花粉を識別し、自身と同じ遺伝情報を含むものは拒絶し、異なる遺伝情報を

  もつもののみ、受け入れるようになっています。これを「自家不和合性」といいます。

 

 

  幸い桃の場合は、「自家受粉」を受け入れます。その性質を「自家和合性」といい、繁殖が

 容易なこともあって、子宝・子孫繁栄の果物として重宝される一因となっています。

 

                    嶋田幸久著「植物の体の中ではなにがおこっているのか」より抜粋