桃のつぶやき  11月号  2015

 

       桃のつぶやき    十一月号

 

●「自家受粉」が望まれない訳―授粉と受精

 

生物が「性」を獲得するまで、生物は自分の細胞を複製する細胞分裂で増殖していました。子孫にも、基本的にはまったく同じ個体が生まれます。

 

 この「無性生殖」と呼ばれる方法は、環境が不変であればきわめて効率的ですが、環境の変化が起こると、種全体が絶滅してしまうリスクをはらんでいます。そのリスクを避けるために、生物は「性」をつくり、「有性生殖」によって「遺伝的多様性」を高めることにしたと考えられています。

 

 だから、環境の変化に耐えて生き延びた種が、今も地球上で生存を続けていると考えられるのです。

  

 ※(ただし、個体レベルで見れば「有性生殖」によって必ずしも子が親より生存可能性が高まると云う訳ではありません)

  

 同じ個体の雄しべの花粉と雌しべの卵は、もちろん同じ遺伝子を持っておりそれを掛け合わせても、子は親と同じ遺伝情報しか持ちえません。

 

 そうした無駄を防ぐため、多くの植物が「自家受粉」を避ける仕組みを備えているのです。

  

 「有性生殖」でオスとメスを掛け合わせ、新たな遺伝情報を持つ子を作るといっても、近い将来(でもないか…)・女性のips細胞から精子を作り、パートナーの女性の卵子と受精することが出来るようになれば、残された男の仕事は……?

 

 

                  嶋田幸久著 「植物の体の中ではなにが起こっているのか」より抜粋